エア抜き装置「エアトース」
ガストース
射出成形品の製造に付き物だった悩みを解消すべく自社製品を開発し、2012年に「ガストース」、2013年に「エアトース」で2年連続の「みやぎ優れMONO」認定を受けた『プラモール精工』。この画期的な製品は社長の脇山さんが手がけました。
樹脂を熱した際に発生するガスの排出を目的に、金型にはベント(通気口)を設けますが、生産を続けるとそこにヤニが付着し空気が抜けず未充填になります。また、圧力を上げると隙間に樹脂が入ってバリ(過充填)が生まれ、無理に入れるとガス焼けを起こします。そこで力を発揮するのが「ガストース」。樹脂の流動性をよくするガス抜きピンです。
「成形機が長時間にわたり一定の圧力で良品を生産するにはどうしたらいいか、空気抵抗のない状態を保ち続ける方法はないかと考え、金型に入る前のスプルーランナー(樹脂の通り道)でガスを抜くことを思いつきました。ガストースを使うと空気が抜け樹脂が抵抗なく入り、ベントにガスがたまることもほとんどなく、長時間の無人運転も可能になります」。
商品化以降も実験を重ね、ピンの溝に角度をつけ改良したことで、現在は空気の抜けがさらによくなったそうです。
探求心と社長の熱意から生まれた新しい装置。
エアトース
「ガストース」と併せて使うことでより高効率の生産を可能にしたのが「エアトース」。商品に「夢のエア抜き装置」と謳っていることからも、製造現場にとって待望の製品であることがわかります。樹脂から発生するガスを除く「ガストース」に対し、金型に閉じ込められた空気を製品部から排出するのが「エアトース」です。
「金型から空気を抜くエアベントの場合、金型に直接溝をつくるため調整に時間と労力を要しました。また、彫りすぎると不良品になってしまうリスクも伴います。エアトースはベントの隙間を自由に調整できる装置。溝が深くなっても戻せるので失敗がないのがメリットです。これで樹脂が充填しやすくなり、ガス焼けも起こらなくなります」。
ベントの深さは0~150ミクロンまで調整可能で、目盛は5ミクロン刻み。この装置の開発を可能にしたのは、溝の深さを調整する特殊なネジです。
「ネジをつくってもらうため、さまざまな工場と交渉しました。多くの工場に断られましたが、開発というのは今までどこにもない新しいものを作るわけですから、“できない”で終わってしまえば今以上の進歩は望めません。諦めない、一途な思いで実現させました」。
尽きない開発への意欲。特典も積極的に利用。
2年連続で「みやぎ優れMONO」に認定されたことで、製品をPRするスピードが加速し、信用度もアップしたという脇山さん。
「公のところから評価されたことはイメージアップにつながります。どんなに優れた製品でも、知名度の低い企業の場合は試してもらうまでに時間がかかりますから、公の機関でお墨付きをもらうことは非常に重要なんですよ。展示会に関する費用や宮城県産業技術総合センターの使用料など、特典は広報や今後の研究に利用させていただています」。
「ガストース」をきっかけにさまざまな製品を開発し、高い評価を受ける『プラモール精工』。今後は「海外に目を向けながら開発を続けていきたい」と力強く話してくれました。
(2013年12月 インタビュー)