車両側部照明装置『シャインマーカー T-SM24D』
新製品の開発に紆余曲折は付き物。とはいえ一度は市場から撤退しようかというシリアスな状況に陥ったと語る佐藤社長。『シャインマーカー』が安定的トップシェアを占めるまでには、険しい山道を乗り越えなくてはならなかったようです。「ヴィークル(vehicle=乗り物)に由来する社名を掲げる当社(vi-crew)は、バスの車体・内装デザインから製作、メンテナンスまでを一貫して担う会社です。企業活動の中で、『こうしたらお客様に喜んでもらえるのでは』という課題や改善点を見出すことが多く、そのひとつに“路肩灯”がありました」。バスの左右後輪の前部、地上高500㎜に設置される路肩灯は、後輪の位置や後方間隔を把握し、巻き込み事故を防止する保安部品。「従来品は、スチール製で、発光部には電球が使われており、腐食や球切れによって頻繁な交換を余儀なくされていました。路肩灯は消耗品という常識を変えたかったんです」。アイデアはすでに頭の中。それを具現化するために宮城県産業技術総合センターの門を叩きました。
防水設計思想が裏目に。シャインマーカー事業存続の危機。
同センターの設計・技術支援の下、2006年、LEDを採用した樹脂製の路肩灯『シャインマーカー』が誕生しました。LEDを使ったのは、日本初の試み。「省電力・長寿命、さらに照射範囲を広げるためのカット面も設けました(特許取得済み)。濃霧時にも視認性を確保するための工夫もあります」。これまでになかった特徴を有する路肩灯は、着々と販売実績を重ねていきました。しかし他方で、クレーム・返品という事態が頻発します。「LEDを使用するにあたり、水の飛沫による影響を防ぐため、密閉する機構にしたんですね。しかし、劣悪な環境下にありますから、どうしても水が入ってしまう、排水されずに溜まる、故障につながる、と防水のための設計思想が裏目に出ました」。返品の山を前に、路肩灯の事業を継続するか否か、苦慮する中、のちに佐藤社長が「捨てる神あれば、拾う神あり」と振り返る出来事が起こります。
次世代型パーソナルモビリティの開発を産学官のオールみやぎで。
「『シャインマーカー』が“地方からの新価値創造”としてNHKの情報番組で取り上げられました。それをたまたま観ていた大手自動車部品メーカーの方から、ぜひパートナーシップを組みたいという申し出がありました。メーカー側の協力によって技術的課題を解決し、全面改良した製品を、全国の販路に乗せることができたのです」。そして「みやぎ優れMONO」へのエントリーは「製品力を総括するため」と語る佐藤社長。「認定に向けては、セルフ・アセスメントという手法によって、自社製品や経営品質を自ら厳しく評価していかなければなりません。そうすることで課題やウィークポイントが浮かび上がってくるのです」。地元企業との連携が今後の課題とされた同社では、すでに新しいプロジェクトが進行中です。「地元の中小企業と団結して、産学官の“オールみやぎ”で次世代型パーソナルモビリティの開発に着手しています」。未来を乗せて走るヴィークル、2020年までの市場投入を目指しています。
(2015年3月 インタビュー)