第6回みやぎ優れMONO認定製品

新製法開発によって可能とした
自然素材デザイン畳「草新シリーズ」

現場の悩み解消に導いた革新的な開発品で2年連続の認定を獲得

草新シリーズ

「近年、世代間のさまざまな格差・相違が指摘されていますが、畳の上で育ってきた中高年世代と、まったく親しみのない若者世代、その隔絶も大きなものがあると実感しています」と高橋社長。畳表(たたみおもて)に使われるイ草(イグサ)の香りを“嗅いだことのない、変な匂い”表現した高校生に少なからぬ衝撃を受けたのだといいます。「“本物の”畳文化の継承か途絶か…今、その分水嶺を迎えているのではないかと思っています」。“本物の”と強調するのは、昨今の畳を取り巻く状況を憂いてのこと。「本来、畳というのは、乾燥させた稲わらを圧縮させて板状にした畳床(たたみどこ)に、イ草または七島イ(しちとうい)の茎を乾燥させて織ったござ畳表を縫い合せた厚みのある敷き物で、国産の100%天然素材を使用します。しかし昨今、安価な輸入品を原材料とするばかりではなく、木材のチップを使用した畳床や合成繊維を織った畳表がいつのまにか主流になっています。これでは畳本来の優れた特徴である、さらりとした手触り、弾力性や遮音性、断熱性、調湿作用、難燃性などが発揮されません。ということは、“良さ”をまったく体感いただけないことになります」。畳は世界に類がない日本固有の文化。1300年かけて育まれ、受け継がれてきた知恵の結晶を消滅させてはならないと高橋社長は立ち上がりました。

多様かつ高い品質要求によって磨き鍛えられた技術。

草新シリーズ

創業以来、文化財を含む神社仏閣や高級旅館など、建築資産としても価値ある案件を多数手掛けてきた草新舎。柱回りや基準寸法(モジュール)外スペースへの対応など、多様かつ高い品質要求に柔軟に応えるため、技術を鍛錬してきたという経緯があります。「一方で、建築トレンドに目を転じてみれば、スタイリッシュな意匠へのニーズがある。そこで我々の強みである伝統技術を、高付加価値なデザインと融合させてみてはと考えました」。高橋社長自らが表計算ソフトエクセルを使ってデザインした『草新シリーズ』は、鋭角を持つ五角形や台形、平行四辺形とこれまでの畳の概念を覆す斬新さ(新技法は特許取得済み)。光の入射角度によってかわる様々な表情と趣に、畳の新しい可能性を見る思いです。「共に暮らす中で、徐々に良い味わいが醸されていきます。経年変化も魅力ですよ」と高橋社長は胸を張ります。

技術の継承を。伝統的な畳産業を俯瞰する視座とともに。

草新シリーズ

『草新シリーズ』には、宮城県産のワラ、大分県国東産の琉球表が使われています。「いくら本物の畳文化の素晴らしさを広めようと願っても、原材料の生産者や職人などの担い手がいなくなっては成り立ちません。ですから産地の保護・振興や技術者の育成も含めた取り組みが、私の使命であると考えています」。「みやぎ優れMONO」認定後は、各メディアに取り上げられることも多くなったと語る高橋社長。「様々なご縁の入口になっています。今も東京の建築設計スタジオとのコラボレーションが進行中です。気温や湿度の急変への対応など輸送上のハードルはありますが、海外マーケットも視野に入ってきました。決してお手頃な価格帯ではありませんが、潜在市場の掘り起こしは十分可能であると踏んでいます」。宮城発のクールジャパン、その活躍が楽しみです。

(2015年3月 インタビュー)

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