第6回みやぎ優れMONO認定製品

高精度移動式ホルダー

切る――そのシンプルにして奥深い先端技術。従来、困難とされた“利便性と精度”の両立に挑む。

草新シリーズ

石器時代、青銅器時代、鉄器時代という歴史区分が示す通り、人類は様々な材料の発見・発展と共に進化してきました。有益な材料を“使える”ものとするには、切る作業が不可欠であり、長い歴史の中で、最適な切れ味と切り口を得るための創意工夫が積み重ねられてきました。大正年間に創設された東洋刃物は、工業・産業分野の基盤技術にして要(かなめ)であるせん断・切断を担い、時代とともに高度・多様化するニーズに応えてきました。「私たちのお取引先がターゲットとしているのは、鋼材、木材、段ボール、繊維、食品からファインセラミックス、高性能フィルム、電極材といった機能性材料まで多種多様です。当然求められる品質・仕上がりは千差万別ですし、中にはミクロン、サブミクロンオーダーの精度を求められるものもあります。“切る”というのは単純にみえて、実は奥が深い先端技術なのです」と話すのは技術課の志村課長。せん断・切断プロセスの設計、刃物提案や切口品質の評価を繰り返す中、さらなる特性向上への課題として抽出されたのが「ナイフホルダー」です。

属人的スキルに依存しない製品を。現場の課題「技術継承」をも視野に。

高精度移動式ホルダー

ある程度の幅をもつ原反を一定の幅で切断するスリット加工という工程において、加工機にナイフを取り付ける保持部品がナイフホルダー。ホルダーには切断幅が一定(変えられない)固定式と幅を自在に変えられる移動式があるそうですが……技術課の佐藤主任が続けます。「移動式は使い勝手や機能性に優れる一方、シャフト(回転軸)に固定する際にズレが生じて、精度低下をもたらしたり、またスラスト(回転体の軸方向に働く力)振れが発生したりすることで、ナイフの寿命に影響を及ぼすといった難点がありました」。移動式ホルダーの“利便性”と“切口品質”は両立しえないという常識に挑んだ同社。「開発のコンセプトは、作業者の能力・スキルに関わらず、素早く取り付けられ、固定式同等の高い品質が担保されるナイフホルダー。締結のネジ回しは人力に依りますから、経験知豊かな熟練者でも駆け出しのオペレーターでも同じようにできることが重要なんですね。これは今まさに製造現場で大きな課題となっている技術継承をも支援するものです」と志村課長。

90年の伝統を礎に。新価値を創造し続ける企業でありたい。

高精度移動式ホルダー

開発した『高精度移動式ホルダー』は、独自の摺り割り部デザインによりスラスト振れを大幅に低減し、皿バネを採用することで安定した接圧を確保できる仕様になっています。固定式に並ぶクオリティは、他社の追随を許しません。「本格的なセールスを開始したのは2012年ですが、2013年1月の「みやぎ優れMONO」認定を機に、販売数を大幅に伸ばしました。やはりお墨付きを頂戴したことが奏功したのではないかと思います」と久保部長。高橋社長が締めくくります。「新しい価値創造が急務といわれます。決して簡単なことではありませんが、ゆるぎない現場への視座と先見性、独創的な発想、具現化を支える技術力、それらが統合されたところに成るのではないでしょうか。伝統ある企業だからこそできることに果敢に挑んでまいります」。

(2015年3月 インタビュー)

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