蛍光体プレート「フォスセラ®」
ここ数年、家電量販店や電器店の照明コーナーは、品揃えが大きく様変わりした印象があります。温暖化対策の一環として、盛んにその導入が推奨されているのが、省エネ・長寿命・高効率のLED照明。「あかりの転換期」の主役というわけです。政府は2020年までにすべての照明をLED製に移行することを目指すとしており、「脱蛍光灯」はますます加速するといわれます。しかし“新しい時代を照らす照明”と華々しいスポットが当たる一方で、製品性能に関しては向上・改善を要する点が多々あるのも事実。そのひとつが投光器や作業灯、サイン照明、天井照明などの高輝度・大光量のLED照明における熱劣化、耐久性能です。
過酷環境に耐える高輝度・大光量LED照明の鍵“蛍光体”。
現在、白色LED照明の多くは、青色LEDの光を(補色である)黄色系の蛍光体に通して発光させています。少し詳述すれば、蛍光体に練り込まれた蛍光体粒子が、励起光源となるLED素子の波長変換の役割を担っているというわけです。井口開発部部長が指摘します。「蛍光体粒子は、白色LEDの演色性を高める(自然光に近い照明を実現する)ために欠かせない材料ですが、従来は有機系の樹脂で固められたものが主流でした。樹脂は熱による影響を受けやすく、耐熱性への懸念が、ハイパワー照明の輝度・光量の制約となっていたのです」。過酷な作動環境に耐え得る蛍光体の開発を――それは30年の長きにわたり、ファインセラミックス材料/部品を提供してきた日本セラテックの技術・開発力が発揮されるにふさわしいステージでした。ファインセラミックスとは、高純度に精製・制御された無機の固体粉末などを使い、精密成形や切削加工を施し、温度制御された焼成炉によって高温で焼成されたもので、優れた機械的特性、化学組成、微細組織を有する機能材料です。最先端テクノロジーにはなくてはならないマテリアルであり、私たちが暮らしの中で使用しているセラミックス製品とは様相を異にします。
LEDの次なる照明へ。半導体レーザーへの展開を射程に置く。
「『蛍光体プレート フォスセラ』の製造プロセスをごく簡単に説明すれば、蛍光体粒子と特殊なセラミックスを混練させたインクを作り、それを蛍光体プレートの基材にスクリーン印刷によって塗布し、乾燥・熱処理するというものです。また塗布層はミクロン単位の超微細設計が可能であり、これは私たちが蓄積してきた独自技術のハイライトといえます」と傳井開発部リーダー。材質に樹脂を含まないために500℃以上という耐熱性を有し、光劣化もなく、蛍光体粒子の混合比率の制御も自由に可能という『フォスセラ』は演色性と信頼性を同時に向上させるキーパーツとして市場に展開され始めています。そして、そう遠くない未来に向けて、同社が射程に置くのは・・・・・・。「ドイツ車のヘッドライトなど、一部では社会実装されていますが、次世代照明として注目される半導体レーザー用の蛍光体です。蛍光体にとって半導体レーザー照明は現在のハイパワーLEDと比較しても更に過酷な熱に曝される環境ため、フォスセラが持つポテンシャルを最大限に発揮できる最高のステージと言えます」。“信頼・進取”を社是に掲げる同社。次代を見据えた進取の気勢と、信頼性の高い技術力の融合に注目していきましょう。
(2015年3月 インタビュー)